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言葉にはできないことが多すぎて菜の花の〈菜〉のあたりに触れる (土岐友浩)
書肆侃侃房の「新鋭短歌シリーズ」・『Bootleg』(土岐友浩)を読んだ。
「言葉にはできないこと」に対して穏やかにして相当な執着がうかがえる歌集であるように感じた。
来た道を歩いて帰るさっき見た花火のことをずっと話して
なんとなく空がぼんやりしはじめる山と山とが重なるあたり
雨らしきものはけっきょく降らなくてスクールバスが県道を行く
難解な言葉、表現が使われないところは一貫している。見開きに3から4首で編まれていて平明でありゆっくりした時間が流れている。この「ゆっくり」ではあるけれど「時間が流れている」という印象は連作のなかだけでなく一首のなかにもたびたび色濃く感じた。
何気ないうつろいを何気なく切り取る魅力。
しかしまったりさせられるばかりでなくて、時にぽんと下の句が飛躍をみせるところが心地よい。
いまはもうそんなに欲しいものはない冬のきれいな木に触れてみる
砂浜はまだつめたくてあなたなら僕よりもっと遠くまで行く
夕空が酸化していくこの道を血だらけになるまで歩きたい
また飛躍というよりも唐突だったり混乱をきたすようであるけれどイメージがすっと腑に落ちるような歌も。
ようこそ、新しい家へ。両耳に鈴の入っているぬいぐるみ
あざやかな記憶のしかし桜草死を看取ったらあとは泣かない
「言葉にはできないこと」をどう表現するかというところで、「言葉にはできない」ことが「金魚」だとしたら金魚掬いの「ポイ」としての短歌に「無理をさせない」「水の抵抗を与えない」ということに注意をされて水の中をのぞき込んでいる作者の姿勢を、屋台のオヤジであったり客であったり金魚であったりと立場をいろいろに変えて見て取れるようでもありました。
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