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『工藤吉生短歌集』をいただいて読んだ。
プロ野球選手のカードを集めるがG・G・佐藤ばっかり当たる
自分が工藤さんの短歌として読んだ最初は、「うたらばの集い」で目にしたこちらの歌だった。
その時は素材というか着眼点が面白い歌だとは思ったが、詩情の面では物足りないように感じた。
しかし今は自分の鑑賞が十分でなかったことが分かる。
「G・G・佐藤ばっかり当たる」ことを「かなしみ」とも「不条理」とも書かず、規定せず、「事実」だけをまるでカードをバサッと投げ出したように提示したことで、読み手の経験であるかのように脳に入り込んでいくように思われる。
この歌は実際今もっても忘れられない一首となった。
工藤さんの歌が記憶に残る理由として太い油性マジックで書かれたような力強いフォルムを持っていることもある。
「死ね」という言葉によって君の持つ説得力が自殺したのだ
ヒョウ柄の強そうな人を後ろから見ているオレの柄はチェックだ
「〜だ」とか「オレ」というのは特徴的だけど自分などはすがすがしさを感じる。
一方で繊細さも失われない。
行間に鳴いているのが秋の虫 花火が一つの詩であるとして
朝の陽のまぶしすぎれば回想のようで遠くに自転車の人
また子供に対する眼差しの澄みきったことには本当に驚かされる。
子供にはちょうど良さげな枝だなあ 構えてもよしつつちてもグー
学校のチャイムが鳴った。そのことでやめた遊びの面白かろう
眠ってる赤子に青いミニカーを握らせ思い直して奪う
ぼくは汽車、汽車なんだぞー! と駆けてきた子供がオレにぶつかって泣く
最後に収録されているのは「仙台に雪が降る」30首。
第57回短歌研究新人賞候補作になった作品だ。
親指に指紋があると思い出し無性に見たくなり飛び起きる
透明な犬飼ってます透明な犬用のエサ食べさせてます
中でもこの二首の空恐ろしさが印象深く、また工藤さんの作品のなかでも異彩を放っているように感じた。
とりとめもなく書き散らかしてしまったが、これからもこれまでのような、そしてまた新しい工藤作品を楽しみにしている。
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